トッド・ズッカーマン “サウンズ & チョイスィズ” – モア メソッド & メカニクス 和訳 – 第2回

Todd Sucherman:  “Sounds & Choices” – More Methods & Mechanics – from Drumeo Youtube Channel (Japanese Translation)

自然な動作は必ずしもすんなりと体得出来る訳ではない

17:25

Q: ルーズなままで居るのが重要と言う件ですが、「間違ったテクニックではないか?」と気にせずにルーズでいるにはどこに意識を向ければ良いのでしょうか?

A: ルーズになって居られているかを鏡で見ながら練習する事だ。いつもの癖に必ず戻ってしまうので頻繁にチェックした方が良いね。癖というのは何か別の事に意識を向けた瞬間にすぐ戻ってくるんだ。常日頃、意識的にルーズで居られるように練習してないといけない。正しい物理の法則を使える様に自身を調節する事が身についてしまえば、昔の癖に戻る事は無いだろう。Some things that are natural to do, aren’t natural to learn – 自然な動作は必ずしもすんなりと体得出来る訳ではないんだ。ただ、一度それが身について実行できてしまえば、自然な動作と言うものが既存の動きとして身体にプログラムされる。そうなった時にサウンドとフィールの大きな違いを感じると思うよ。

支点の魔法は中指で作られる

18:35~

グリップの角度は自分の手がドラムセットのどこに居るのかによって変わるものなんだ。ライドシンバルに右手が行けば、親指が上を向いた角度の方が身体にとって自然な角度だろう。実は人差し指はグリップの中で一番役割が薄い指なんだ。支点の魔法は中指で作られるものなんだ。ピーター・アースキンがクリニックでグリップについて話をしていた事があった。その時彼は犬に 『「ダメでしょ」って注意する時の手つき』 と説明していたよ。

スティーブ スミス が トニー ウィリアムズ グリップ と呼んでいる 薬指と小指で握るグリップを私も多用している。ロックのドラミングには最高に使えるグリップなんだ。フロアタムやゴングドラムの様な大きなドラムを打つ時や、クラッシュする時にもルーズにスポンジの様にフワッとしたままスナップを効かせられるし、パワーも出せる。

重要なのは姿勢

19:55~

ルーズでいられる様にする為にもう一つ重要なのは姿勢だね。
真っ直ぐ座る様に意識するんだ。人によっては前かがみで演奏する人がいるけど、いつか背中を怪我する事になるだろうね。傾いて演奏する時のサウンドが良い時もあるのだけど、真っ直ぐ座る事を常に意識した方が良い。生徒の中にも傾いて演奏する人がいるけれど、理由を聞いてみても大抵の場合は理由が無かったんだ。欲しいサウンドの為に少し傾いて演奏するのは良いと思うけど、傾き過ぎは絶対にダメだね。どう考えてもリラックスしたポジションではないよ。

そうなると「自分の演奏スタイルと出したいサウンドの為に最も良いセットアップを見つける」のも大事な焦点になる生徒が初めてレッスンに来た時に『とても重要な事なので確認。いつもやっている様に ハット、スネア、バスドラ をセットアップして欲しい。』と必ず聞くんだ。よくあるのが、スネアをすごく低い位置にセットして自分に向けて傾けているパターンだね。マッチドグリップで演奏するプレイヤーならアリだとは思うけど、スネアを打つ時に太ももにも当たってしまっている様な人を見かけるよね。このセットアップが良い人も居るとは思うよ。伝説的なプレイヤーのフィル コリンズも同様のセットアップをするしね。ただ、それは特殊なケースなんじゃないかな。

それと、この手の生徒によく聞かれるのが、トラディショナル グリップ でプレイできる様になりたいけれど、なかなか上手くいかないと言う相談。それはそうだよ!! もしもスネアを低くセッティングして自分に向けて傾けているのであれば、物理的に不可能だよ。

「答えが無い」に萎えたり怖気付いてはいけない

22:14~

ドラムセットのセッティングについてだけれども、私は主にトラディショナル グリップ で演奏するので、それに合うセッティングをしている。腕や脚の長さなど、人それぞれ身体つきは違うよね。それなのに、ペダルのスプリングの締め具合はどの様にしてるのですか?と言うような質問をよく受けるんだ。私の答えは 『I don’t Know! – わからないよ!』。私と君は同じではないと言う事さ。スプリングの締め具合、ビーターの長さ、スネアの高さ、ハイハットとスネアの位置関係などを色々と試してみると言うことは、自分にピッタリなものを見つけると言う旅なんだ。答えが無い事に萎えたり怖気付いてはいけないよ。色々な種類の花を組み合わせて花束を作るように、色々な選択肢を楽しむべきなんだ。それは君自身が開いて見てみるべき扉だよ。自分自身でぴったりなものを見つけ出さなければならない。そう言う風に色々と試して見ているドラマーは実は少ないと私は感じているよ。

生徒に 『なぜそう言うセットアップにしてるんだい?』と質問すると大抵の場合以下2つの答えのどちらかが帰ってくる。

  • 特に理由はない
  • いつもこうしているから

でも『なぜ』?

『なぜ』と言う疑問を自分自身に投げかける必要があるんだよ。どうやったら自分の楽器から良い音を出せるのか実験しないとね。

私のセットアップは バスドラムを並行なまま少し内側に入れている。こうする事によってタムも自分に寄せる事ができるんだ。これならトラディショナル グリップ で演奏する時の自然な軌道に沿ってタムを配置できて、打面の中心もしっかりと捉える事ができる。特に3つ目のタムが内側に寄っていると身体の動きに自然な位置になる。

ライドシンバルを随分高くセッティングしていると思われがちだけれども、実はそんな事はないよ。確かにベルを演奏する時は手を伸ばす事になるよね。ベルを演奏するのは音楽的に曲中で盛り上がっているセクションだよね。手を伸ばして、(車で言う所の) ギアが4速、5速 に入っている様な感覚が私は好きなんだ。

自分の身体の感覚に正直でいる事

25:57~

Q: 他にどんなアドバイスがありますか?
とりあえず思い付く事を色々と試して、上手く行くかを試し続ければ良いのでしょうか? 自分に合っている答えが見つかった時『これだ!』と言う感覚になったりするものでしょうか?特に初心者の人達にとっては、初めて自分でセッティングをする時点で訳が分からなくなってしまう事もあると思います。それと自分が好きなドラマーの様になりたいので同じセッティングにしてみる事もありますよね。それに対してのアドバイスはありますか?

A: 自分自身そして自分の身体の感覚に正直でいる事だね。何かが違っていたら、身体が必ず必ず何か伝えてくる。その声に耳を傾ければ良いのさ。スティック一つをとってもサイズやウェイトが自分の手に合っていなければ、筋肉がすぐに疲れてしまったり、手が勝手にグリップを持ち替えようとしたりするはずだ。そういった身体の声に耳を傾けるんだ。何故なら身体は嘘をつかないからね。無論、1日2日でこれが自分に合ってないと分からない事もあるさ。色々と試してみて、自分にぴったりな『HOME – 家』を見つけるのは楽しい事だよ。辛抱強く発見のプロセスを楽しむんだ。 何年も、ひょっとしたら永久に続くプロセスかもしれない。それはそれでイケてるよね。常に進化し続ける旅なのさ。私も最近はチャイナシンバルを低くしてみているんだよ。

ドラマーは自信を持って演奏しなければならない

28:30~

Q: 他にはどんな事がありますか?

A: ドラマーは自信を持って演奏しなければならない。自信を持って演奏しないとダメだ。女性は自信のある男性に魅力を感じる様に、バンドには自信を持ってプレイするドラマーが必要だね。一緒に演奏するバンドメンバーは「こう?これで良いかな??」と自信なさげにやるドラマーよりも 「オレがやる時はこうなんだ。」とハッキリと提示してくれるドラマーとの方がやり易いのさ。ドラマーはバスの運転手みたいなもの。ドラマーは自分が思っている以上にダイナミクスの上がり下がりをコントロールしているんだよ。だから自信を持って演奏しなきゃね。生意気や気取りではなくね。自信と気取りは全くの別物だからね。

翻訳: Aran Alcaraz Nagashima