トッド・ズッカーマン “サウンズ & チョイスィズ” – モア メソッド & メカニクス 和訳 – 第3回

Todd Sucherman:  “Sounds & Choices” – More Methods & Mechanics – from Drumeo Youtube Channel (Japanese Translation)

ドラムセットを含む全ての楽器をドラマーの位置からミックスをする

29:10~

レッスンの時によく聞かれるのが、スタジアムやアリーナ級の大きなライブの現場についてだ。もちろん彼らもそう言った現場をやってみたいと思っている訳だ。『では、イケてるロックなサウンドで演奏してみてくれよ』と言ってドラムを叩いてもらうんだ。そうすると生徒達は十中八九こんな演奏をするんだ (29:26 )。悪くは無いけど、エキサイティングな演奏ではないよね。間違いなく『イケてるロックなサウンドのドラミング』ではない。
彼らの演奏の音量バランスを聴いた時によく思うのが、バスドラが弱すぎると言う事。大きなロックコンサートで演奏したいのなら、音量バランスはこうであるべきじゃ無いだろうか?(29:47 の辺り)もう少し『BUTT – 音に気合』が入ってなきゃいけない。

ドラムを演奏している時にいつも私が心掛けているのは、ドラムセットを含む全ての楽器を自分の (ドラマーの) 位置からミックスをする事なんだ。演奏している現場がアリーナだろうと、地元のクラブやホテルであろうと同じだ。自分が演奏している場所で自分達の演奏がクリアーに良い音で聞こえると言う事は、他のバンドメンバーや音響のスタッフの位置でも良い音で聴こえてると言う事なんだ。

必要なのは『強固な基礎カッコいいバスドラムのサウンド』

30:36~

ドラムセット内での音量バランスのミックスを意識する事について。私自身がドラムセットを演奏するときはバスドラムとスネアを音の密度が同じになる様に心掛けている。対照的な二つの楽器から同じ質感の空気の揺れを生み出したいんだ。ハイハットはどちらかと言うとケーキの上のアイシング (飾り) の様な感じと言えば良いだろうか。まだ初心者の若いドラマーに多いのがハイハットの音が大きくてバスドラの音が弱いと言うパターンだ。(30:48) この二つの音量を逆にしたらすぐにプロフェッショナルなサウンドに早変わりする。CDや音源で聴いている様な感じだね。バスドラムは建物で言うなら『基礎』なんだ。いきなりビルの10階は作れないよね?基礎の上に建物が建てられて、初めてビルの10階を作る事ができるんだ。

カッコいいバスドラムが鳴っているだけでパーティーは盛り上がるものなんだよ。女性達がフロアで踊り始めて、男性達がカウンターでオーダーしたお酒を持って彼女達を追いかける。クラブは大盛り上がりで、オーナーは売上が上がって大喜び、君のバンドをまた雇ってくれるって言う話さ。必要なのは『強固な基礎カッコいいバスドラムのサウンド』なんだ。

カッコいいバンドサウンドの根底にはドラマーのサウンドバランスがある

32:10~

自分のプレイが自分のいる位置で良いサウンドになっているのであれば、ベーシストや他のプレイヤー達からも良いサウンドに聴こえているはずだ。4~5人のミュージシャンが同じタイム感やサウンドを共有して演奏出来るのは、オーディエンスにとって物凄くパワフルな事なんだ。

バーで演奏しているバンドを観ていて何も感じないって事あったりしないかい?その後、別のお店へ足を運んでみたらそこの箱バンの演奏が『うお!すげえカッコいい!』ってなったりしてさ。個々やバンドによって表現や解釈はそれぞれ違うだろう。ただし、メンバー全員が同じ考えの下で演奏していたら、オーディエンスは何かとてつもなくカッコいい事が起こっている事に必ず気が付くだろう。ドラマーが自分の楽器ごとのバランスをどうミックスしているかがその根底にはあるんだよ。

ハイハットを少しソフトに演奏するだけで、音響スタッフは『おお!こりゃあ色々聴こえてやりやすい!ここにリバーブをかけて、ここの音をもう少し際立たせて。。。』と言う選択ができる様になる。ハットの音量が大きいドラマーが来たら話は真逆になるんだよ。彼はうるさ過ぎるハットの音量を絞り、それに合わせてスネアとオーバーヘッドマイクの音量も絞る事になって、変なEQをかけたり、その他いらない事をする事になる。その時点でステージから出てくるドラムの音は君のサウンドではなくなってしまう。さらにバスドラが弱ければ音をアタック音をやたらと上げたりして、悪い意味でファンキーなドラムサウンドを作る事になってしまうんだ。自分のセット内の音のミックスを真剣に考える必要があるんだ。

I wanna be sound driven – カッコいいと思うサウンドに正直でいる事

33:54~

それに加えて、自分のスネアの叩き方を客観的に見直してみた事がある。自分が普段から打面の中心より数インチ奥側を叩いてる事に気がついたんだ。あまり意識していなかったので「なぜだろう?」 とじっくり考えたんだ。

答えは I wanna be sound driven – カッコいいと思うサウンドに正直でいる事。無意識に自分がいつも叩いてるエリアの音が気に入っていたんだね。
打面のど真ん中が最も音が出るエリアだと考えているドラマーも沢山居ると思う。確かにルーディメンツをやる時は正解だと思う。ただ、私の場合はロックを演奏していてオープンリムショットを多用する。スティックのチップを数インチ奥側(北側)で当てて深い位置でリムを掛ける事でもっと大きなサウンドが得られる。

ギタリストの様にドラマーも 「Aメロ − Bメロ − サビ」と曲が進行と合わせて音色をコントロールする事が出来る。スネアの打点の位置でそれをコントロールするんだ。私は曲の進行と音のイメージに合わせて打点の場所を変えて場面の違いを表現できる様に心がけている。特にレコーディングをしている時はこう言う繊細な表現に気を配っているんだ。

音楽的な選択は演奏している音楽と共存している

36:10 ~

Q:繊細な表現に気を配っているとの事でしたが、上手いドラマーからプロのドラマーのレベルになるにはその繊細な表現どう捉えたら良いのでしょうか?そしてどの様に練習すれば良いのでしょうか?ドラマーの多くが陥りがちなのは、あるドラムパターンができる様になったら次のパターンを探したり、次にやりたいテクニックや練習に気が行ってしまう事があったりすると思います。対照的にあなたは自分の演奏している音楽と演奏の質をいかに高めていくかについてを話していますよね?どうやったらそれができるのでしょうか?

A:まず、自分の演奏の質を高めたいと言う強い気持ちが大事だと思う。忍耐強く、そして音に対して正直である事。周りのミュージシャンからの意見、特に自分よりも年上の人達からの助言を真摯に受け止める事。常に謙虚に彼らの言わんとする事に耳を傾けるんだ。今話をしている事を自覚し、ちゃんと理解したのは40代になって人に教える事が増えてからだった。それまでは、無意識に自分の耳に従ってやってた事だったんだ。サウンド主導にどこかで切り替えることが出来れば、曲に対してどんなチョイスをすれば良いのかは自ずと見えてくる言い方を変えれば、先に音楽がどんなチョイスをするべきなのか提示してくれるんだ。それに対して自分が出来る事で擦り合わせていけば良い。君のドラマーとしての音楽的な選択は演奏している音楽と共存しているべきなんだよ。

その領域に到達する為には、音に正直でいる事、音楽をよく聴く事、耳に意識を向ける事。そしてスネア、ハイハット、シンバルなど自分が使う楽器それぞれから、何千何万という音色が出せるという事に気が付かなければならないんだよ。

翻訳: Aran Alcaraz Nagashima