トッド・ズッカーマン “サウンズ & チョイスィズ” – モア メソッド & メカニクス 和訳 – 第1回

Todd Sucherman:  “Sounds & Choices” – More Methods & Mechanics – from Drumeo Youtube Channel (Japanese Translation)

はじめに

有名なオンラインドラムレッスンのサイトDrumeoのyoutubeチャンネルにStyxなどの著名なバンドでツアーを回っているトッド・ズッカーマンさんの
“Sounds & Choices” – More Methods & Mechanics –
と言うレッスンが掲載されています。僕の大好きなドラマーの一人です。彼の Methods & Mechanics と言うDVDに付随する内容になっていますが、このレッスン単体でもあらゆるレベルのドラマーとミュージシャンの方々にとても有益な内容だと思ったので和訳をしてみました。

タイトルを直訳すると
“音色と選択” – 更なる 手法 と 技巧 –
ちょっと堅苦しい響きに聞こえるかもしれませんが、とても素晴らしいレッスンです。彼のメッセージとこの和訳が読んでくださった方の何かしらのヒントになれば幸いです。ご興味ある方はDrumeoのサイトもチェックしてみてくださいね。

https://www.drumeo.com/sucherman-sound/

走れる様になる前に、まず歩く事を学ばないといけない

0:00~9:59

デモ演奏 & 紹介などのイントロダクション

10:00~

教える事を始めてから自分やドラマーの皆さんが演奏でやっている事を改めて見つめ直す機会があった事をとても幸運に思っているよ。なぜなら、いつも無意識に自然とやっている事を相手に伝わる様に言葉にしていかないといけないからね。最初の Method & Mechanics のDVDは自分としては勢いで作った所もあったんだ。と言うのも、私の生徒達の中には とても速いツーバスを踏める人や、クロススティックやスティック回しができたり、19/16の様な複雑な変拍子の演奏を教えて欲しい と言ってくる人が何人か居た。

そういう生徒達の多くがたった4小節の安定したビートを演奏する事が出来なかったりしたんだ。彼らはとても的外れな事に多くの時間を費やしてしまったんだよ。走れる様になる前に、まず歩く事を学ばないといけないんだ。難解な事を練習する前に、しっかりと”歩ける”様になるべきだ。僕の教則 DVD “Method and Mechanics” はドラマーがドラムの演奏だけではなく、音楽の演奏ができる様になる助けになればと思って作ったんだ。難解でカッコいい事はもちろんやりたいよね。でも、それができる様になるには正しいステップを踏んでいかなければならないのさ。

12:15~

私が個人レッスンをする時はコーチとしてのスタンスを取っている。良い演奏する上で、生徒一人一人が面している問題を特定する様に努めているんだ。詰まる所、ドラムを演奏する時の問題の多くは物理的な要素に目を向けれは解決するんだ。楽器のバランス、楽器間とドラムセットの中でのミックス、そしてドラムの打面を打つエリアと打ち方だったりね。

基礎的(簡単)と思われている事は実はそんなに簡単ではない

彼らのドラミングを見ていて気がついたのは some of the basics might not be so basic – 基礎的(簡単)と思われている事は実はそんなに簡単ではないって事。もう一度基本を見直してみよう、と良く言われるし、経験のあるプレイヤーの中には 『うわ〜、またコレか』と思ってしまう人も居ると思う。でも、落ち着いて考えてみて欲しい。私は人々が基礎にもっと意識を向けているものだと思っていたんだ。今の時代、DVDやオンラインで色々な知識や技術を見る事はできるよね?ただし、見たから/知っているから と言って実際にその概念を習得している事にならないんだよ。自分の学習した概念を完全に自分のプレイの一部にしないと意味が無いんだ。

LOOSE(ルーズ)でいる

レッスンでは初めにスネアを演奏してもらったり、TIME (ビート) 演奏してもらったりする。私が注目するのは生徒がどの様にスティックを握っているかなんだ。重要なのは、とにかく Loose (ルーズ) でいる事。グリップに関しては親指と人差し指の間にスペースができる様に脱力した状態でグリップ出来ているかだね。腕の筋肉の脱力も重要だね。かなり高速なジャズのシンバルレガートを演奏しているドラマーを見て、あれはどうやっているんだろう?と思ったなら、脱力してルーズでいる事が唯一の方法だよ。もしも力んだ状態でグリップしていれば、その影響は肩や首の筋肉の緊張 (力み)を及ぼす事になるんだ。そんな状態で高速レガートなんて絶対に無理。

左手に関しても同じ事が言えるよね。ウイップ から クラック (モーラーストロークの Whip Motion から Crack – オープンリムショットの事) への動きは一つなんだ。マッチドグリップでもトラディディショナル グリップ (レギュラーグリップ)でもそれは変わらない。私は主にトラディディショナルグリップで演奏をするのだけど、とてもルーズにグリップしているよ。

特に若い (初心者の)ドラマーはこの説明をされても、ピンと来ないって事もあると思う。車のヘッドライトに驚いた鹿の様な顔になってしまったりしてね。とにかく覚えておいて欲しいのは スティックはルーズに(脱力して)握っていても、手からすっぽ抜けるなんて事は滅多に無いと言う事なんだよ。『すっぽ抜けてしまったら??』もし そうなったら、『だから何?』と言ってすぐに予備のスティックを手に取れば良いだけの事さ。

私はこの楽器を45年演奏していて、怪我をした事なんてほとんどないんだ。と言う事は私の話は的を得ていると自負しているよ。

ルーズで居る事は 君の演奏のスピードや持久力の向上に役立つだろう。ゴルフ、バスケ、演劇、設計、ギタリスト、ドラマー … 君がどんな事をやっている人だろうと、リラックスしている時の方が良い結果が出せると確信している。リラックスする為に重要なのが、ルーズでいる事なんだ。

Sound Driven (サウンド主導)

15:50 ~

高速の三連符を例にとって見せてみよう。自分では廉価版モーラーストロークと呼んでいるんだけど、グリップは親指と人差し指の間にスペースがあって、そこが中心になって動いているんだ。蝶が飛んている様なイメージのサウンドと説明すれば良いかな?高速なんだけれども、とても楽なんだ。マシンガンでガツガツ撃っている様なサウンドではないよね。(16:10)

対照的にサウンドにもっと緊張感や切迫感を持たせたければ、イメージ通りに少し硬い感じにしたり、リバンドだけなく筋力を使っていけば良いよね。 サウンドが ”蝶” から “電気ドリル” に変わっていくのを見せるからね。(16:28)

これをコントロール出来るようになると言う事は、Sound Driven (サウンド主導) になっていると言う事なんだ。楽なサウンドから緊張したサウンドへ意識的な判断をして変えていったんだ。ルーズでいられれば、高速3連フレーズなんて1日中やっていられるよ。力はほとんど使っていない。世の中のドラマーの多くが筋力だけで演奏してしまっていると感じているよ。ルーズで脱力した時に出せる音は筋力で出すものと全くの別物なんだ。物理の法則に基づいて、スティックが軽やか且つ空気感のある動きをする様に自分自身を調節していく事が本当に大切だね。

翻訳: Aran Alcaraz Nagashima