トッド・ズッカーマン “サウンズ & チョイスィズ” – モア メソッド & メカニクス 和訳 – 第5回

Todd Sucherman:  “Sounds & Choices” – More Methods & Mechanics – from Drumeo Youtube Channel (Japanese Translation)

自分のアイディアを曲に付け加え、物語の語り手の一部になる

48:28~

Q: 音量が小さくても大きな影響を与える事が出来る についてお話し頂けますか? A: 頭ではわかっていたけど、普段そんなにやらない事で得た教訓がある。 カナダのトロントでのレコーディングセッションに呼ばれた時の事だ。既に別のドラマーのテイクで完成している曲のドラムトラックだけを撮り直しして欲しいと言う内容だった。 曲の雰囲気はQueenとFoo FightersとThe Whoの融合という感じだったかな。私は直感的にパワフルなドラミングをするべきだと判断したんだ。(49:20) ドラムをぶっ叩いてるって感じだよね?一回目のテイクを終わらせコントロールルームに戻った時、部屋の誰一人として私のテイクを再生しながらノッている人は居なかったんだ。自分のパートは正しく演奏できている。良いサウンドで演奏もできている。ただ何というか曖昧だったんだ。 例えて言うなら、入院した時に出る食事という感じかな。誰もノッていないし、笑顔も無ければ、ハイファイブも無い。セッションプレイヤーとして頭をフル回転させて解決策を考え付く必要があった。思いついたのは、 「この部屋だとハードにプレイすると、逆にドラムが細い音で録れてしまうのではないか?」という事だった。 すぐに「マイクのレベルを変えてくれ。もっと静かにプレイしてみる。」とエンジニアに声をかけてやってみたのがこれだ。(50:30) コントロールルームに目をやると、エンジニア達はノリノリになっていたよ。 「危なかった」と思ったね。こういう時は内心焦っていてももクールを装わないといけないよね。何を変えたのかって?このトラックに関してだけれども、あの日、あの部屋で、あのマイク達で、あの曲をレコーディングした時はボリュームを落として演奏した方が、ドラムがハッキリと録れたんだ。裏側のヘッドの鳴りやスネアの響線の音もはっきりと聞こえる、シンバルは打ち付ける波の様で、おかげでいくつかのギターの旋律が際立って聴こえる様にもなったんだ。この件は自分にとってもすごく勉強になったよ。 曲にもよるけれど、レコーディングの時はあえて強く叩かない方がドラムが大きな音で録れたりする事があるってね。

57:10~

あえて音量を抑えたドラミングは楽しいと同時にとてもチャレンジング(挑戦的)だ。もっと細かいフレーズだったり速いテンポの方が自分にとっては簡単なんだ。だからこの手のドラミングを要求されてうまく行った時は、すごい満足感を感じるよ。音楽をプレイしているって感じがするんだ。音楽と歌詞のムードや物悲しさを自分のアイディアを使って曲に付け加えて、物語の語り手の一部になれるんだ。リラックスしない限り音楽の魔法は使えない Q:練習のモチベーションを保ち続ける為のコツはありますか?ギブアップしたい気持ちになってしまっている時期に前に進み続けるにはどうしたら良いのでしょうか?

59:02~

A:難しい質問だね。誰しもメンタルをくらったり、障害や壁に当たってしまう事があるよね。そういう時は自分の演奏全てがダメに聴こえてしまったりするよね。そうなってしまったら、少し距離を置いてみると良いよ。他のドラマーやバンドのライブを観に行ったり、美術館や公園に散歩をしに行ったりして頭の中を一旦空にしてみるんだ。それから少しずつで良いからもう一度ドラムと対話してみるんだ。「やあ、また会えて嬉しいよ。今日は一緒に楽しもう。」ってね。 馬鹿げた事の様に聞こえるかも知れないけれど真実なんだ。 ミュージシャンとして誰しもが経験する事の例を一つ挙げよう。ステージに上がってライブが始まって「これは本当に俺がいつも使ってるドラムセットか?いつものペダルと違わないか?いつも演奏の時に履く靴か?いつものスティックか?」となってしまう事がある。普段の現実からまるでかけ離れてしまった様な感覚になってしまって、全てが噛み合わなくなってしまう。こういう精神状態に陥ってしまった時に音楽の魔法を使う事はできない。こういう時こそ一歩下がって、「最初の2曲は良くなかった、しょうがない。本当のライブは次の曲から始まるんだ。」と考えるんだ。良くなかった事は全て流して、自分を心機一転させるんだよ。手数を減らして、肩の力を抜いて、リラックスしない限り音楽の魔法は使えないんだ。丸い棒を四角い穴にはめられないのと同じだよ。 練習だって同じ事だ。何のための練習なのか理解していればやりやすいよね。これはみんなが通る道。辞めずに続ける以外に道はない。

結果的にどんなサウンドなんだ?

1:00:52 ~ 

Q: 力強いバスドラのサウンドの件ですが、ウッドビーター、フェルトビーターのどちらかの方が音量を得られる等あるのでしょうか? A: ロックをプレイする時は、プラスチック製の DAMMER DISC (ダンマーディスク) を何年も使っているのと、枕をバスドラの中に入れている。ダンマーディスクを使い始めた頃、レコーディングの度にエンジニアにディスクを付けているのと付けてない場合どちらが良いサウンドか聞いていた事がある。質問をした全員がディスク付きの方が良いサウンドだと回答したんだよ。ロックを演奏している時は強いアタック音が欲しいと思っている。DAMMER DISC を使い始めてからバスドラのヘッドが破れた事は一度も無いんだ。Styx のツアーだとバスドラのヘッドは6ヶ月は持つね。

1:02:00 ~

Q: ドラマーの多くがビーターをヘッドから離す奏法ではなく、押し付ける奏法でプレイしているのを見かけます。打面に付けると離すでサウンドが全く変わりますよね。それに関してどの様に考えているのか、またエンジニアの人達から奏法の指定があったりしますか? A: エンジニア側からバスドラの奏法を変えてくれと言われた事は一度も無いよ。打面に付ける付けないは、人それぞれのやり方や意見があるよね。私はどちらも使う。演奏しやすかったり、欲しいサウンドを得られる奏法でやれば良いと思う。スネアの打面にスティックを押し付ける事だってあるよ。そっちの方が良い時もあるからね。(1:02:58) 違うサウンドになるし、雰囲気も変わる。音色の選択肢の一つだよ、パレットの上の絵の具みたいにね。普段はオススメしないテクニックだけど。

1:03:30 ~

Q: 加えてですが、打面に付けるか付けないかについて気にしている人は沢山いると思いますか?そもそもきにするべき事なのでしょうか? A: 答えはNOだ。そんな事きにするか?と私は思うよ。君が音楽を聴いていて考えている事はそこかい?ギャビンハリソンが Porcupine Tree で演奏しているのを聴いて、「ビーターを打面に付けているか、いないか?」そんな事考えて聴かないだろう? そんな事どうだっていいんだ。付けている時もあるだろうし、離している事もあるだろう。結果的にどんなサウンドなんだ?が一番大事な事だよ。 スティックの上の方でグリップして、自分のアイディアと出したいサウンドが得られるなら、この持ち方が間違ってるなんて誰が言えるんだい?確かに、ビーターを離した時のバスドラのサウンドは独特の鳴りがあったりする。ジョージョーメイヤーの様な人だったら、ペダルのテクニックとバスドラのサウンドについて5時間ぶっ通しで話し続けられるかもしれない。私はそういうタイプじゃ無いんだ。はっきり言って気にしていない。もしそこに気を取られてしまっているなら、他にもっと気にするべき事が沢山あると思うよ。

成功への5つのポイント

1:07:10 ~ 

いつもドラムクリニックの最後に言うことがある。『もし “これ” (ドラム・音楽) で生きて行きたいと思っているなら、真剣に自分の時間をこれに費やさないといけない。日々の生活の事に流されてしまってはいけないよ。』”これ” をやりたいと思っている人は世の中に沢山居る。他の事をやっているのは本末転倒だと思った方がいい。全身全霊で学び、聴き、プレイをして飲み食いと同じ様に自分の生活の一部にさせるんだ。加えて、君が望むレベルで活躍する為にするべき事、逆を言えば多くのミュージシャンができていないポイントが5つある。
  1. 遅刻はしない時間を守る事。言い訳はするな。逆に早めに到着する様にする事。
  2. 準備万端で現場に臨む例え呼ばれた仕事が明日までに25曲をさらわなければいけない様な内容だったとしても、25曲全曲さらいなさい。手を抜いてはいけない。
  3. 良い機材で現場に臨む良い機材を持って行きなさい。現場と曲にあった機材の選択をする事。
  4. 良い演奏をする一番難しいポイントだね。最高のプレイをぶちかましてやるんだ。
  5. 君が現場に来てくれて良かったとみんなに思ってもらう世の中には不機嫌な人達、気難しいミュージシャンが沢山いる。不平、不満ばかり言う人がいるよね。君がその人になってはいけない。
この5つのポイントを半年から一年、堅実に意識してやってみてごらん。行きたいレベルへ君をいざなってくれると保証するよ。

ドラマーとは 諦めずに続ける人、我々が特別なんだと自覚している人、そして生き様を表現する人

趣味で続けたい人達も絶対に音楽と関り続けるべきだよ。ドラムをプレイし続けよう。ドラムでなかったら、ギター、ピアノ、絵画や彫刻でもいい。想像力を駆り立てられて没頭できる何かを続けて欲しい。美しい感情の昇華を続けて欲しいと願うよ。 もし君が週末だけプレイするだったり、友達とジャムをするだけだったとしてもだ。辞めたりしないで欲しい。ドラムをプレイし続けよう、学び続けよう。それと、ドラマーはこの世で最もクールな人種なんだよ。ドラマーのやる様な事を他にする人達はいないだろう?ドラムフェスティバルやドラムクリニックもそうだ。 私の人生の中で他のドラマー達は大好きな人達だし、最も古い親友達なんだ。 ドラマーとは 諦めずに続ける人、我々が特別なんだと自覚している人、そして生き様を表現する人 だと思う。世界中のみんながドラムをプレイしたらとても幸せな世の中になると思うよ、みんな頑張ろう!!
翻訳: Aran Alcaraz Nagashima